臨床工学部
透析室で働く臨床工学技士の仕事
透析医療は、精密な医療器具を用いて行う専門性の高い治療です。このため、透析医療では、医療機器の専門家として臨床工学技士(CE)が、患者様が安心して、安全かつ確実に治療を行うために大切な役割を担っています。
主な業務として次の3つが上げられます。
1. 透析装置の準備・管理・保守点検
① 透析装置の点検や回路の組み立て、立ち上げ操作
② 治療前、治療中、治療後の装置の安全性と動作確認と監視
③ On-line HDFをはじめ各幅広い血液浄化療法の準備
④ 透析液水質管理
特に「On-line HDF(オンラインHDF)」という治療では、透析液そのものを体内に戻すため、非常に高い清浄度が求められます。
2. 透析看視
① 穿刺業務や、治療開始操作、回収操作、トラブル時の対応
② 治療中の看視:透析中は、機械だけでなく患者様の体調も常にチェック。血圧や脈拍、呼吸など、わずかな変化も見逃さないよう注意して、 医師・看護師と連携し業務に携わっています。
3. 医療機器全般の保守
① シリンジポンプ・輸液ポンプなどの点検・修理・保守
② その他、医療機器全般の保守・管理
§1. 透析液の作成について
専門的になりますが、水処理装置(一般的には逆浸透膜濾過装置(RO装置)と言います)で水道水中の塩素・微生物などを除去したのち、透析液溶解装置(透析液を作成するのに必要なA液・B液を作成する装置)および多人数用透析液供給装置(治療に使用する透析液を作成する装置)で作成された透析液の濃度を厳密に管理し透析装置へ供給しています。
§2. 各種血液浄化法について
元町HDクリニックでは、患者様の状態に応じてOn-line HDF、β2-ミクログロブリン吸着器(リクセル®)の併用療法や吸着型血液浄化器(レオカーナ®)などを用いて幅広い血液浄化法を施行しています。
① On-line HDF
On-line HDFは高度に清浄化した透析液を補充液として用い、血液透析(HD)と血液濾過(HF)を合わせた血液浄化方法です。小分子溶質(血液中の毒素で小さい物質で除去しやすい)の除去に加え、中分子~大分子溶質(血液中の毒素でHDでは除去しにくい)領域の効率的な除去が可能となります。長期透析の合併症であるアミロイドーシスの原因物質であるβ2-ミクログロブリンを積極的に取り除いて合併症を予防することができます。

② β2-ミクログロブリン吸着療法(リクセル®)
長期透析患者様の合併症に透析アミロイドーシスという合併症があります。透析アミロイドーシスでは初期に関節の痛みや運動制限が出現します。これが進行すると破壊性脊椎関節症(DSA)を発症することがあります。破壊性脊椎関節症(DSA)は、長期透析患者様にみられる脊椎の病気で、特に頚椎に多く発生します。アミロイドが脊椎に沈着し、脊椎が破壊されることで、首の痛みや手足のしびれ、麻痺などを引き起こします。
原因はβ2-ミクログロブリンというタンパク質が原因で発症すると言われています。リクセル®はそのβ2-ミクログロブリンや炎症性物質を吸着により除去することで症状を改善もしくは軽減させることができる治療方法で、透析アミロイドーシスが強い患者様には、on-line HDFとの併用療法が可能です。(リクセル®の使用には一定の用件が必要です)

③ 吸着型血液浄化器(レオカーナ®)
血行再建術不適応な潰瘍を有する閉塞性動脈硬化症(ASO)の患者様に対し吸着型血液浄化器レオカーナ®を行っています。レオカーナ®は、LDL(悪玉コレステロール)及びフィブリノーゲンの吸着による下肢の血流改善を施し、難治性潰瘍を治療することを目的に使用しています。

§3. 透析液の水質管理
生菌培養・エンドトキシン検査:透析液を補充液として用いるon-line HDF等の治療を安全確実に行うため、微生物汚染のない厳密な透析液水質管理を行っています

元町HDクリニックでは、長期透析患者さんの合併症である透析アミロイドーシスの代表的な症状である手根管症候群の発症率と透析液清浄度の関係が報告されていることから、日本透析医学会および日本臨床工学技士会の提唱する透析液水質基準2016に準じてエンドトキシンと生菌測定を行っております。エンドトキシンは0.001EU/mL未満(測定感度未満)、生菌数は0.1CFU/mL未満の超純粋透析液を担保しております。また、エンドトキシン測定は東亜ディーケーケーの生物発光法(Luminutes-ET)を、生菌測定はADVANTEC社製37mmクオリティモニターを使用しています。

§4. 穿刺業務
患者様にとって、大きなストレスの一つは、透析開始時の穿刺ではないでしょうか?
透析の穿刺時の痛みを軽減するためには、麻酔テープ(リドカインテープ・ペンレス、エムラクリーム®)や保冷剤による冷却、深呼吸などのリラックス法、そして穿刺技術の向上が有効と言われています。痛みが少なくできるよう、元町HDクリニック臨床工学部・看護部では技術の習得と理論の学習を日々続け、医師・看護師とも情報共有をしています。また、穿刺困難な患者様に対しては、超音波を用いて、エコーガイド下穿刺も積極的に取り入れております。

§5. 透析中の看視業務
透析装置の監視だけでなく、患者様のバイタルサインを見逃すことがないよう、チェックし、医師・看護部と連携をしています。

§6. 機器メンテナンス
安全に装置が稼働できるよう、定期点検・故障時の対応(修理等)を行っています。

最後に
臨床工学技士は、生命維持管理装置の操作や保守点検を行う医療機器の専門家です。医師の指示のもと、人工心肺装置や人工呼吸器、血液浄化装置など、高度な医療機器を扱うことで、患者様の命を支える重要な役割を担っています。医学と工学の両方の知識を駆使し、医療現場で安全な医療を提供しています。
